研究概要 |
申請者はこれまでに鈍頭平板,急拡大流路内および突起物まわりのはく離と再付着を伴う流れおよび熱伝達の解析において,乱流場における渦構造を鮮明に捉えることができるよう対流項に5次精度,粘性項に4次精度の差分スキームを適用した高次精度計算手法を開発している.この計算手法を乱流モデルの適用が困難な低レイノルズ数領域の遷移流れに拡張し,その精度の確認を行い計算手法の妥当性について検討した. 上述の計算手法を用い,板厚に基づくレイノルズ数450の流路内鈍頭平板まわりの流れと熱伝達の数値解析を行った.このレイノルズ数領域では層流ではく離したせん断層が乱流へ遷移し再付着する,いわゆる層流はく離・乱流再付着の状態になる.前縁ではく離したせん断層は下流に行くに従い不安定となり,ヘアピン渦を生成する.ヘアピン渦は時間の経過とともに下流へ移動し,両脚が主流方向に伸びた管状の縦渦構造へと変形する.ヘアピン渦の渦放出周波数は乱流場における既存値より高く,強い周期性を示す.また,ヘアピン渦の変形によって生じた管状縦渦構造が層流境界層中の熱輸送に大きく寄与している.さらに,流路のアスペクト比を変えた計算では,遷移直後の流れ場にはアスペクト比による本質的な流れの相違は現れず,流路中央部からヘアピン渦が1つ放出される.
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