研究概要 |
水素を燃料とするガスタービンの利用は環境・エネルギー問題への対応策のひとつとして考えられ,その利用における唯一の公害排気成分である窒素酸化物(NOx)の低減は重要な課題である.ガスタービンのような連続燃焼におけるNOx低減手法のひとつとして濃淡燃焼が挙げられる.これは燃焼によるNOxの大部分を占めるZel'dovich NOの生成が過濃混合比でも希薄混合比でも減少することを利用したものであり,その効果が炭化水素燃料で実証されている.本研究では,ガスタービン燃焼器を同軸型の濃淡燃焼バーナーに改造し,これまでに報告されていない水素濃淡燃焼のNOx排出特性について,代表的な炭化水素燃料であるメタンの濃淡燃焼と比較しながら実験的な解析を行った. 本研究の結果,適切な過濃側当量比を選択することでNOx低減効果が得られ,特に過濃側当量比が大きい条件において水素濃淡燃焼のNOx低減効果がメタン濃淡燃焼よりも大きいことが明らかになった.また,濃淡燃焼のNOx排出特性について,拡大Zel'dovich機構を用いた反応計算モデルによる検討を行った結果,水素濃淡燃焼においては実験と計算の良い一致が見られたが,メタン濃淡燃焼では特に過濃側当量比が大きい条件において実験値が計算値を上回っており,拡大Zel'dovich機構以外のNO生成機構がメタン濃淡燃焼のNO生成に影響を及ぼしていることが分った.炭化水素の過濃燃焼においては,燃焼中間生成物HCNを介してprompt NOが生成することが知られており,必然的に過濃燃焼領域が存在する濃淡燃焼ではprompt NOの割合が相対的に高いことが考えられる.しかし,炭素を含まない水素は過濃燃焼時にもprompt NOを生成しないために以上の結果が得られたものと考えられ,水素は炭化永素燃料に比べて濃淡燃焼によるNOx低減に有利な燃料であることが明らかになった.
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