研究概要 |
地球環境に対する負荷が小さく,次世代のエネルギー源として期待されている水素を媒体とすると同時に,自己の体積の約1000倍もの水素を吸収,放出する能力を持つMH合金は,水素ガスとの水素化反応をエネルギー変換の機構として用いることができるため,自然エネルギーや低温排熱を利用したヒートポンプ,冷凍等の熱利用システムに応用できる.平成12年までは,高温用合金(MH-1合金)の反応速度の定量化,熱物性値と有効熱伝導率の測定,および炭素繊維混入による伝熱促進実験などを行ってきたが,本年度からは,新たに低温用合金(MH-2合金)層の反応速度定量化、熱物性値および炭素繊維混入による伝熱促進実験を行った後,冷凍システム実験装置の製作を行うと同じに,冷凍システム性能予測プログラムを製作した. MH合金層の熱物性値測定にはJISによって定められている土粒子の密度試験法をMH合金粒子密度測定に使用し,示差走査熱量測定機(DSC)をMH合金の比熱を測定に使用した.これらの方法を使うことで,活性化・安定化処理により,数μm直径の微粒子になったMH合金層の物性測定が可能になった.また,MH-2合金層の有効熱伝導率測定を行ってから,炭素繊維混入による伝熱促進を図り,2wt%の炭素繊維を混入した場合、最大で3倍まで伝熱促進されることが確認できた. MH冷凍システム性能評価のためには,MH-1とMH-2合金が各750gずつ充填できる熱駆動型冷凍システム実験装置を製作してから,高温熱源温度,中間冷却温度および,システム初期水素圧条件が冷凍性能に与える影響は実験によって調べた.また,シミュレーションにより実験結果の検証も行った.最終的にはシミュレーションで炭素繊維混入がシステム冷凍性能に与える影響を予測し,特に冷凍負荷の増大に効果的であろうと予測された.
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