研究概要 |
炉内は通常高温の既燃ガスが充満もしくは循環している.そこに噴射された予混合気の噴流(もしくは噴流界面)が着火と消炎を繰り返す,もしくは浮き上がりと再付着を繰り返すという振動燃焼の機構は概念的には広く受けいれられている.しかし,その詳細なメカニズムと発生条件が明確化されているとは言えない.そこで本研究では高温既燃ガス中に噴射された予混合噴流の着火・燃焼挙動を観察することにより,着火機構や過渡的な火炎構造に関する知見を得ることを目的とする.本年度は高温既燃ガス流中に同軸に噴射された希薄予混合気が,定常な乱流火炎に発達するまでの過渡現象を観察し,当量比,流速等の違いによる着火パターンの変化を観察した.主流燃料にはメタン-空気予混合気を,周囲流燃料には都市ガス-空気予混合気を用い,高速度ビデオカメラにより直接撮影を行った. 主流当量比を0.5から1.0まで0.1刻みで,主流流速は10m/s,20m/s,30m/sで変化させて,火炎自発光の時間的・位置的な変化を観察した.その結果,当量比0.8付近を中心に,バーナーポートより50mmから100mm程浮き上がった位置で強い発光を伴った瞬間的な反応が観察された.当量比がより低い場合や量論比に近い場合ではこのような浮き上がった瞬間的な強い反応帯は観察されなかった.また流速が速いほど,より当量比の広い範囲で同様の浮き上がり反応が見られた.予混合気が高温既燃ガス中に噴射される瞬間には両者の間に定常流の場合より強いせん断混合が起こる.そのため着火は予混合気と高温既燃ガスとが混合された比較的強い乱流場で起こると考えられる.主流当量比が薄い場合は主流の反応性が弱いため,せん断混合領域での反応が緩慢にしか起こらず瞬間的な強い反応帯が形成されなかったと考えられる.また,当量比がより量論比に近い場合はバーナーポート直上のあまり発達していないせん断混合領域ですでに強い反応が起こり,その燃焼ガス帯が主流と高温既燃ガス流との間に形成されることによりせん断混合が妨げられるため,せん断混合領域自体が発達しなかったものと考えられる.
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