本研究は、屋内外を問わず、水平および上下方向の歩行による移動距離を、足の動きを利用して無拘束計測する方法を提案する。また、3次元移動距離計測センサシステムを試作し、提案する方法の有効性を確認する。以下に、平成13年度の研究成果を示す。 1.3軸加速度と3軸角速度から、3次元空間内を移動するセンサシステムの姿勢を推定する方法を考案し、移動座標系で計測した加速度を固定座標系の加速度に変換する方法を考案した。 2.歩行中に足が地面に接地しているとき(立脚相)では足の速度をゼロとし、3軸加速度計より得られる重力加速度の3軸方向成分と2軸地磁気センサより得られる地磁気の成分を利用して、立脚相でのセンサシステムの姿勢(3つの計測軸の3次元ベクトル)を求める方法を考案した。これは、歩行中に足が空間を移動している時期(遊脚相)での、加速度積分による移動距離推定の際の初期条件を求めるために必要となる。このとき、加速度センサおよび地磁気センサのノイズによって、推定されるセンサシステムの姿勢に矛盾が発生する場合がある。特に地磁気は、周囲の環境内に存在する金属や磁性体に影響されやすく、実際の地磁気よりも大きな成分を出力する可能性がある。そこで、2軸方向の地磁気成分の比を利用して、センサシステムの姿勢導出の際の数値計算に矛盾が発生しない方法を考案した。 3.遊脚相終了時のセンサシステムの姿勢とそれに続く立脚相でのセンサシステムの姿勢が連続的につながるような修正を行うことによって、歩行中のセンサシステムの姿勢推定のために実行される角速度積分の積分誤差を軽減する方法を考案した。 4.3軸加速度センサ1個、1軸角速度センサ(ジャイロ)3個、2軸地磁気センサ1個によって構成されるセンサシステムを試作し、センサシステムの安定性評価、キャリブレーションなどを行い、3次元移動距離の実測のための計測環境を整えた。
|