研究概要 |
本年度は,電気・油圧サーボ機構を一般産業用油圧機器,特に油圧式バックホーへ応用するにあたり,油圧シリンダのコンプライアンス制御,すなわち,作業対象から受ける反力に応じて油圧シリンダが常に適切な柔軟さに調整され,同時に高精度な位置制御をも実現することを目的とした.まずはじめに,本研究では一般産業用油圧機器として,油圧シリンダ,比例弁および油圧源からなる油圧回路部と,レーザ変位計並びに圧力センサからなるセンサ部,比例弁への制御入力を演算するパーソナルコンピュータからなる制御部を構成した.油圧回路部は,両ロッドシリンダ,片ロッドシリンダ(内径40mm,ロッド径22.4mm,ストローク600mm)からなる油圧シリンダをフランジ継手を介して対向させ,両ロッドシリンダを制御用に,片ロッドシリンダを負荷用に用いた.両シリンダは,それぞれ独立した油圧源を持ち,制御側シリンダは比例弁を介して制御を行い,負荷側シリンダは電磁式リリーフ弁を介して任意の可変負荷を与えることができる.油圧源は,最大20.58MPa,40l/minの作動油を供給する能力がある. コンプライアンス制御を行なう手法として仮想剛性,仮想慣性質量,仮想粘性摩擦係数のインピーダンスパラメータを考慮に入れたインピーダンス制御があるが,特に剛性をオンラインで切換えて最適に調整し安定性を向上させるインピーダンス変調法はそのロバスト安定性の点で有効な制御手法といえる.本研究では,インピーダンス変調法における剛性の変調にスライディングモード制御則における平滑化を適用して,チャタリング抑制と安定性の向上を図った.位置制御には負荷に対してロバスト性が高い外乱オブザーバを併用した2自由度最適サーボ系を採用した.さらに,油圧式バックホーでの接触作業を想定した負荷に対するシミュレーションと実験を行い,従来のコンプライアンス制御の諸法と比較して,本方法による制御性能が一般産業用油圧機器への適用の面で優れていることを確認した.
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