研究概要 |
空気圧シリンダを利用した駆動システムでは,低速度で動作する場合,摺動部の摩擦によって発生する振動がしばしばスティックスリップへと発展し,動作が断続的となる.そのため,スティックスリップの発生は,特に中間位置停止を行う際に精密動作を妨げ,停止精度の著しい劣化の一因となる.そこで本研究では,中間位置決めのための空気圧サーボ系に対するスティックスリップの低減化を目的としたゲインスケジューリング制御,及び空気圧シリンダにおけるスティックスリップの発生要因と発生に関する条件の検討を試みた.ゲインスケジューリング制御では,振動の誘因となる摩擦力の動的変動を補償するため,動摩擦力の主パラメータである速度に対する摩擦係数を時変パラメータとして扱い,線形パラメータ可変システムを構成した.ただし,動摩擦係数を直接測定することが困難なため,摩擦モデルを取り入れてオンラインで推定することとし,それに応じてコントローラを調節することでプラントの動特性の変化に追従させ,スティックスリップの発生による性能劣化の防止を図った.また,搬送負荷の質量が変化する使途が多いため,負荷質量も変動パラメータとすることによって効果的な制御を目指した.提案手法では,実験により固定ゲインの制御と比較すると,特に摩擦が非線形性を示す低速時の応答が改善され,負荷の変動も考慮に入れて設計を行えば,目標値付近においてスティックスリップの抑制が実現された.一方,スティックスリップの発生条件に関しては今後検討を行う.
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