本研究では、ヒトのジェスチャがダイナミックな手先運動で構成されていることに着目し、指先および手首部分の加速度情報に基づいたパソコン入力システムの構築を行った。対象物体を移動させることを想定し、ジェスチャを行う指示者が周期的に手先を動かす場合には、手のひらの向き、手先振幅の大きさおよび速度が、それを見た側の認識する対象物体の移動方向、距離、速さと深く関連していることを見出した。これらの結果をふまえて、ジェスチャの加速度情報をパソコン画面上のポインタ操作に反映させる試みを行った。手首部分には歪ゲージ型の加速度計を装着し、重力加速度を利用することでポインタの移動方向に関わる手のひらの向きを判別した。また操作ポインタは、指先の加速度が閾値以上の値となったときに動作し、その移動量は加速度振幅に応じて変わるように設定した。パソコン画面上に表示された目標ポインタに対して追従実験を行った結果、実験試行を重ねるにつれて目標ポインタと操作ポインタとの誤差が小さくなり、学習効果が見られた。次に、本装置の汎用性を高めるため、加速度情報を一旦制御用パソコンに取り込み、制御信号を出し、PS/2インターフェイスを介して一般のパソコンのマウスカーソル操作を行うシステムを構築した。ここでは、操作性を高めることを目的として、ジェスチャの加速度が閾値を下回った場合にもマウスカーソルの移動が持続されるようにホールド時間を設けた。その結果、ホールド時間を設けない場合に比べ操作性が改善され、本手法によるマウスカーソル操作の有効性が示された。
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