本研究では、機械可動部が流体と直接接触することなく、流体エネルギーから回転運動を取得できる流体圧モータ(IP Motor-I)を開発した。ドラム内壁に巻かれた柔軟チューブ内部に流体を流すと、柔軟チューブを摺動するローラーが高圧側から低圧側へ自転しながら公転し、回転トルクを生成できる構造である。また、柔軟チューブを2本対向して使用することにより、1本のみでは生じるローラー不動状態の特異点を回避することもできる。このような駆動方式は、漏れ防止のパッキンが不要なため低圧駆動が可能なうえに、錆や腐食の懸念もないため、いまだ実用化されていない家庭用水道圧モータとして適している。開発したIP Motor-Iは直径120[mm]の円筒形をなし、水道圧で動かした結果最大で15[W]の出力を生成できた。70kgfの人間の持ち上げ動作においては、20[mm/s]の移動が可能となる。このような状況でも容易に使える速度制御用の弁も開発した。 さらに、直径60[mm]の円筒形状に小型化したIP Motor-IIの開発も行った。これは、ドラム内部において軸と平行に柔軟チューブを配置することによって実現できた。動作はステッピングモータのような間歇的回転運動を生成し、切換え弁の代わりに自励振動による切換え機能を開発中に発見した。これら水道圧駆動モータは、今後さらに進化を遂げ、家庭内における新たな市場の発展につながるものとなろう。
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