研究概要 |
本研究では,仰向け状態から直立状態への脚の振り降ろしを利用した起き上がり運動について考察した.運動は脚を振り降ろして腰回りで回転を起こししゃがんだ姿勢になるまでのフェーズとしゃがんだ姿勢から立ち上がり直立状態になるまでのフェーズに分けて考えた. 前者においては,運動の成否は脚の振り降ろし時の角速度で決まると考え,その値を角運動量に基づいて見積る方法を提案した.この方法は,位相面を用いた解析と角運動量の保存に基づいている.このとき問題になるのは,腰まわりの回転中に角運動量がどれだけ変化するかであり,これは系全体の重心の軌道と密接な関係がある.そこで,腰まわり回転の初期位置・終了位置を用いて腰まわり回転時に重力によって変化する角運動量を概算する方法をとった.これによりダイナミクスを解くことなく必要な角速度を見積もることができるようになった.提案した手法の有効性・妥当性を,シミュレーションおよびロボット実験により確認した. 一方,後者では前年度に提案した床反力に基づいた直立姿勢の制御法を応用した.その方法では,腰関節・膝関節に軌道を与えて伸展させた際に生じるバランスの乱れを足関節の出力で補償する.このとき足部の形状が前後に非対称な場合,床反力の中心をどこに制御すべきかが問題となり,同じように前後非対称な足部をもつ人間がどのようにしているかめ計測を行った.人間の場合は床反力の中心を足部中央に制御しているとはいいきれないが,足関節の出力を小さくなるような直立姿勢の制御法はとってはいないことがわかった. 今後これらの知見を活用し再現性の高い起き上がり運動を目指す.
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