研究概要 |
本年度の研究ではまず,ワイヤの途中に挿入して張力を測定するひずみゲージ式張力センサに対する検討を行った.センサのワイヤへの機械的結合方法を見直し,昨年度より張力に対する伸び量を小さくした.また,外来ノイズがセンサ出力に与える影響とひずみゲージ結線方法との関係を解析し,その影響を十分に減ずることのできる結線方法に変更した,これと平行して,3自由度実験装置の設計と製作を行った. 一方,昨年度の課題であった,張力誤差がゼロに収束する傾向が確認できなかった点に関しては,まず1自由度装置の逆動力学シミュレーションを実施した.その結果,張力誤差,その積分値ともにゼロに収束して,制御則そのものは有効に機能することが確認された.これを踏まえて実験を行ったところ,装置を数十[s]駆動したところで駆動ユニットの挙動が不安定になり,それ以上の継続動作が不可能になる現象が再現性をもって観察された.この現象は,装置の順動力学シミュレーションでも観察された.シミュレーションならびに実験結果を評価したところ,制御則に組み込まれている適応的動特性補償項の中で駆動ユニットの動特性パラメータに対する推定が進行する過程に対応して,駆動ユニットの見かけ上の動特性が変化し,結果的に不安定になることが知見として得られた. 制御則の対策を検討すべく,1自由度装置に立ち返り,制御則を適用した場合に得られる,結果としての運動方程式を導出して詳細に観察したところ,ハンドルの質量が既知であれば,一種の「最適な」調整ゲインを与えることができ,駆動ユニットの見かけ上の動特性が不安定になる現象を回避できる可能性が見出された.順動力学シミュレーションの結果もこの知見を支持するものであった.しかし,多自由度への拡張,既知と考えるハンドル質量の不正確さが制御に与える影響などを十分検討できるまでには至らず,今後の課題として残った.
|