雷に代表される空間電荷放電は、電極間で起こる放電の様相とは大きく異なり、放電開始・進展機構に不明な点が多い。本研究では、帯電粒子による空間電荷放電を実験室規模で発生させる装置の開発を目的として、高い空間電荷密度を有する帯電体群の形成方法について実験的に検討した。帯電体として直径10mm、長さ500mmのアルミ棒を使用した。このアルミ棒を間隔50mmで8×8本並べてアクリル板に固定し、縦横400mm、高さ500mmの立方型帯電体群を形成した。この帯電体群は電荷をあたえるための直径0.1mmのタングステン線電極が中心部に設置され、帯電体周囲が接地電極で囲まれている。タングステン線電極に最大100kVの高電圧直流電圧を印加してコロナ放電を起こし、放射状に正または負のイオンを発生させて帯電体群に電荷を与えた。棒帯電体の両端から放電が起こらないように、両端には直径20mmの球電極が取り付けられている。周囲の網電極の一部は、取り外しできる構造になっており、帯電体に電荷を与えた後に放電をトリガするための接地球電極を近づけることができる。また、トリガ電極に電界を集中させるため、放電をトリガする際に周囲の網電極にバイアス電圧を加えることができる。 作成した帯電体の空間電荷密度は、コロナ電流60μAで最大125μC/m^3に達した。この帯電体とトリガ電極との間で起こる空間電荷放電の電荷量は、最大130nCであった。また、バイアス電圧を加えることで放電電荷量が200nCまで増加することを確認した。放電の大きさはトリガ電極の大きさに依存し、空間電荷放電に特有の現象が確認された。今後は、コロナ帯電のための放電線の数を増やして、段階的にコロナ帯電させ帯電電荷量を増大させる方法について検討するとともに、放電の開始・進展の様子を光学観測する予定である。
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