研究概要 |
本年度は,提案手法の有効性の検討と実験の前準備を行った。 1.アルゴリズムおよびシステム構成の検討 カオス同期現象を利用したパラメータ値同定手法の有効性を計算機シミュレーションによって検証し,システム構成および同定アルゴリズムについての基礎検討を行った。カオス同期状態がパラメータ値変化に対してどのように変化するかを、実システム-仮想システム間の相関図および相関図断面を用いて調べた。同定精度を確保するためには,実システム-仮想システム間の結合係数を適切な値に選び,その値を適応的に調節する必要があることが分かった。また,微小なノイズや,値を同定すべきパラメータ以外のパラメータに値の若干の不一致が存在しても,パラメータ値同定は可能であることも明らかとなった。 2.発電機でのカオス発生条件について カオス同期現象を利用するためには発電機を故意にカオス状態にする必要があるので,その発生条件について調べた。発電機固有の動特性は発電機の規模等によって違いがあるが,様々な条件化でのシステムの振舞いを計算機シミュレーションによって確認した結果,電圧制御系(AVR)のゲインと時定数を調節することにより,カオス動揺状態にすることが可能であると分かった。以前から行っている研究により,動揺の振幅はAVRリミッタの上限値設定によって簡単に制御できることが分かっていたが,さらに,カオスが当該電力システムに発生するためには,非線形要素としてAVRリミッタが存在すればよく,発電機動特性は線形システム的であっても構わないことも明らかになった。これは,実験系統でカオスを発生させる為に有用な解析結果であると言える。
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