研究概要 |
本研究は,太陽光発電システムなどの分散電源導入によって生じる高調波電流増加現象とその補償を目的としている。配電系統に存在する高調波成分の影響により,系統と連系運転される太陽光発電用インバータの制御性能の悪化や効率低下の問題が生じる恐れがある。本年度は,既存の配電系統における高調波ひずみ率を実測し,その要因について詳細に検討した。さらに高調波補償装置を提案した。平成13年度の研究期間を通して得られた研究成果の概要は以下の様に要約される。 1.配電系統の高調波ひずみの現状調査 日本の配電系統は単相3線式の変圧器を用いて各需要家に給電されるが,欧米などでは三相4線式が一般的である。また,日本においても将来的には三相4線式配電系統システムとなる可能性が十分に大きい。そこで,これらの電気方式の相違と高調波ひずみ率の現状調査を行った。その結果,負荷電力に応じて高調波ひずみが大幅に異なり,また三相4線式では3次高調波成分が支配的であることを明らかにした。一方,住宅地区配電系統においては単相100Vの電圧ひずみは5次高調波成分が他の高調波成分に比べて十分に大きいことを実測により明らかにした。 2.三相4線式低圧配電系統の電圧ひずみ補償法 三相4線式配電系統の特徴は,中性線に過大な3次高調波成分が流入することである。本研究では,この点に着目し中性線と直列に単相電圧形インバータ一台から構成される電力用アクティブフィルタを挿入し,負荷端で生じる電圧ひずみ抑制法を提案し,計算機シミュレーションによりその有効性を明らかにした。これは,従来のアクティブフィルタに比べて,省スペース・低コストで構成される点に特長があり,また既設の建造物に設置可能である。 本年度の研究成果を基に,来年度の研究では太陽光発電システムなどの分散電源の導入による影響を考慮し,詳細に検証を行う。
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