ケーブル・イン・コンジット型導体(CICC)を模擬した超伝導導体を用いて超伝導コイルを作成し、これに交流を通電して損失を測定した。通電電流が大きい方が損失も大きくなり測定が容易になるため、まず本年度は6本のNbTi/Cu/CuNi素線と中心SUS補強線よりなる7本撚り導体を用いた。 磁束密度0.5Tにて、コンジット内のボイド率が異なる2種類の模擬CICCに周波数60Hzで波高値約130Aの正弦波交流を通電して交流損失を測定すると、ボイド率が小さい(15%)ため素線の動きも小さいCICCに対して、ボイド率が大きい(80%)CICCでは、損失が約1.5倍となった。この2種類のCICCは同一の導体およびコイル形状であり、また電流値と外部磁界も同一である。従って、導体に生じる結合損失とヒステリシス損失は同一であり、測定された交流損失の差は素線の動きによる摩擦に起因する機械損の差である。さらに巻線張力をゆるくしてCICCが動きやすいコイルを作成し、同一の条件で交流損失を測定したところ、10倍以上の交流損失であった。 実際の超伝導コイルを用いたこれらの結果より、導体の固定が悪く動きやすい場合には、機械損が増大してしまうことが実験的に示された。今後は、高温超伝導線を用いて機械損を低減させるためのコンジット材の検討などを実施する予定である。
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