1.分子線エピタキシー(MBE)法による立方晶InGaN成長 RFプラズマ源を用いて、GaAs上及び3C-SiC/Si基板上に立方晶GaNを成長させ、それをバッファとして立方晶InGaN膜を成長させた。成長条件の選択によりInNモル分率で最大50%程度までのInGaN混晶を成長できた。熱平衡に近い有機金属化学気相エピタキシャル(MOVPE)法による六方晶InGaN成長においては25%以上のInNモル分率を持つ高品質薄膜の成長は殆ど不可能に近い。一方、我々の用いたRF-MBE法ではInNの再蒸発を防げる温度において熱非平衡成長の利点を生かして成長できたと考えられる。高In組成の薄膜の表面状態はやや荒れており、六方晶相の混入が多くなる場合もあったが、成長条件の最適化により回避できるものと考えられる。低温のフォトルミネセンス測定では、In組成の増加に従って発光ピークエネルギの低エネルギシフトとブロードニングが同時に起きており、X線測定からも組成不均一性の増大が確認された。 2.フォトルルミネッセンス・フォトリフレクタンス等の光学的物性評価 フォトルミネセンス(PL)スペクトルにおいては1項に示したようにInNモル分率の増加に伴ない有効バンドギャップ不均一性も明らかに増大する。立方晶構造では六方晶構造で問題とされるピエゾ電界による電子-正孔の波動関数の重なりの減少は無い。したがって、観測したPLの不均一性は組成の不均一性を反映するものであると考えられる。PLとPR測定はバルク試料について行ったが、量子井戸構造についても基板をエッチングで取り除き、光吸収測定にてバンドの観測を試みた。その結果、立方晶InGaN/GaNの多重量子井戸において顕著な組成不均一性によると思われるバンドテールが形成されることがわかった。六方晶InGaN量子井戸において空間分解カソードルミネッセンス測定から数十nmスケールの組成変調が認められており、拡散長を短くしてキャリアを局在させ、発光効率の増大に寄与したものと考えている。
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