アモルファス半導体は、光に対し敏感な材料で多くの光誘起現象を示す。このことは、これら材料の光機能性デバイスへの応用を大いに期待させるものである。中でもクリーンで安全なエネルギー供給源として期待されるアモルファス太陽電池は、結晶、多結晶に比べ作製コスト、大面積化が容易な点で有利ではあるが、信頼性において光による劣化が大きな問題となっている。光劣化の問題は、アモルファス半導体を用いた高感度X線イメージセンサーパネルといった従来のX線フィルムに代わる次世代デバイス開発においても大きな問題となっている。アモルファス半導体は光機能性デバイスへの応用における高いポテンシャルを有するが故に、今後ますます重要な材料となりうる。しかしながら、光劣化現象をはじめ光誘起現象の中で、そのメカニズムが明らかになっている現象はほとんどない。本研究では、様々な光誘起現象の中でも光照射によるエネルギー構造変化に的を絞って、そのサイズ効果を研究することで、現象のメカニズム解明の糸口をつかむことを目的として行った。 本研究では光誘起によるエネルギー構造変化の結晶サイズ効果の研究として、真空蒸着法を用いて作製したカルコゲナイド系アモルファス半導体薄膜に対し、極端紫外光による内殻レベル付近のエネルギー構造変化についての評価と光音響分光法による光学バンドギャップ付近のエネルギー構造変化についての評価をした。得られた成果として、光学バンドギャプの光照射による変化が、およそ50nmの臨界膜厚を境に急激に減少し、光誘起現象が消失することを明らかにした。また、その原因が光照射前の結晶構造、あるいは膜と基板間に働く応力によって説明できることを示した。今回明らかにした光誘起現象の結晶サイズ効果は、光誘起現象のメカニズムを知る上で重要な結果であり、今後さらに光誘起現象と結晶サイズとの関連を詳細に明らかにしていきたいと考えている。
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