SiCでは、酸化膜や電極形成前のエッチング処理として、Siプロセスと同様の室温でのフッ化水素酸(HF)処理が行われている。この室温HF処理後のSiC表面をX線光電子分光法により観察した結果、表面にグラファイト状の炭素が残留していることが解った。残留炭素は、SiO_2-SiC界面の特性を劣化させる一因だと考えられている。そこで、本年度は、SiO_2形成前の清浄化を目的として、1.沸騰HF処理、2.エキシマレーザー処理の2つの方法を用いた残留炭素除去を行った。 1.沸騰HF処理後のSiC表面構造の観察 HFとSiCの化学反応を促進させ、効果的に残留炭素の除去をすすめるために、反応温度を上昇させることを試みた。本研究では、沸騰HF処理を用いた。沸騰HF処理後の表面をX線光電子分光法により観察した結果、沸騰HF処理は室温HF処理に比べて、残留炭素を25%減少させることが解った。また、同軸型直衝突イオン散乱分光法による表面構造観察から、沸騰HF処理を行うことにより、表面原子配列が、より整った状態になることが解った。 2.エキシマレーザーによるSiC表面の清浄化 沸騰HF処理では、残留炭素を完全に取り除くことはできなかった。そこで、KrFエキシマレーザーを照射することによるSiC表面の清浄化を試みた。 (1)エキシマレーザー照射エネルギー密度の最適化 表面の清浄化を行うためには、SiCを分解しないレーザー照射エネルギー密度が必要である。また、そのエネルギー密度は、レーザー照射による酸化膜作製においても重要となる。そこで、飛行時間型質量分析器を用いて、KrFエキシマレーザーの照射エネルギー密度とSiCの分解について観察した。その結果、エネルギー密度0.3J/cm^2においても、表面から原子及び分子が脱離することが解った。
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