本研究は、カーボンナノチューブを用いた新しい電子デバイスを実現するために、主に電極構造や、カーボンナノチューブと電極と接触について検討する基礎研究である。 本年は、ナノチューブの基本的な電気的特性を評価するために、シリコン/シリコン酸化膜上に、櫛形のAu/Cr電極構造を作製した。EB描画法を用いて、電極幅約2μm、電極間隔が約2〜18μmの構造を作製した。この電極構造上に単層および多層のカーボンナノチューブを分散し、電子顕微鏡や原子間力顕微鏡による観察や、電気的特性の評価を試みた。 基板上に分散したカーボンナノチューブの電子顕微鏡観察では、電極上に単体のカーボンナノチューブが分散されている箇所もあったが、複数本のカーボンナノチューブが束になったバンドルや、ナノチューブ以外のグラファイトなどの不純物も認められた。 作製した試料の電気的特性の評価を行った。室温での評価から、抵抗値にして数100Ω〜数10kΩの線形性のある電流-電圧特性が観測された。この特性が、ナノチューブを通った電気伝導かどうかを調べるため、伝導性カンチレバーを用いた原子間力顕微鏡を用いて、微視的に評価する実験を開始した。
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