マイクロ波プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition:化学気相成長)法を用い、各種成長パラメータ(下地触媒金属の状態、水素プラズマによる前処理時間、カーボンナノチューブ成長時間)に対するカーボンナノチューブ成長状態を調べた。成長状態を基板断面から観察するため、劈開の容易な単結晶シリコン基板を用い、この上に下地触媒金属をたい積させてカーボンナノチューブ成長用基板とした。下地触媒金属には鉄を用いた。カーボンナノチューブの成長プロセスは、1)水素プラズマ処理(表面金属微粒子化、清浄化)、2)水素・メタンプラズマ処理(カーボンナノチューブ成長)、の2つの処理を連続的に行う2段階プロセスを用いた。 以上の方法でカーボンナノチューブの成長を行い、電子顕微鏡観察を行ったところ、基板に対し垂直配向したカーボンナノチューブが成長していることが確認された。このカーボンナノチューブの長さは、前述した成長プロセスの時間に依存するが、水素プラズマ処理および水素・メタンプラズマ処理の処理時間に対し、カーボンナノチューブの長さが最大になる時間が存在し、その時間より長い時間処理を行うと、逆に成長するカーボンナノチューブの長さは短くなる傾向があることが明らかになった。これは、水素プラズマ処理の時間により表面に形成される金属微粒子の数や直径が決まり、これらがその後に成長するカーボンナノチューブに影響を与えること、また水素・メタンプラズマ処理時間が長くなると、カーボンナノチューブ同士が寄り添って束になり、お互いの成長を妨げあうようになって成長が止まることが原因であると考えられる。 以上の結果より、プラズマCVD法によるカーボンナノチューブ成長制御が行えるようになった。今後はカーボンナノチューブの電子放出特性に焦点を当て、研究を進めてゆく。
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