研究概要 |
本研究において以下にあげる成果をあげる。 1.ナノ微細構造を持つ炭素材料をSi基板上に作製するために用いるPt薄膜の成長条件を調べた。製膜にはレーザアブレーション法を用いた。その結果、レーザエネルギー密度4J/cm^2,繰り返し周波数10Hz,基板温度100℃で作製した膜が最も(111)面配向性が高く、500℃以上で(200)面の成長が見られると同時にPtSiシリサイド膜が形成されることを明らかにした。 2.1と同様にNiをSi基板上に作成する条件を調べた。その結果、Arガス100mTorr、基板温度400℃にて表面平滑製に優れた膜ができることを明らかにした。 3.1、2と同様にTiをSi基板上に作製する条件を調べた。製膜にはRFプラズマCVD法を用いた。その結果、TiCl_4を原材料として、水素を導入ガスとして用いることにより、高品質なC54相のみからなるシリサイド膜の作製に成功した。また、膜とSi界面は平坦であり、基板Siの浸食はほとんど起きていなかった。この結果は、炭素材料の触媒としてだけではなく、CMOSゲート電極材料の新しい作製プロセスの開発につながるものである。 3.酸素雰囲気中で、グラファイトターゲットのレーザアブレーションを行い、対向して配置された基板にナノ微細構造を持つ炭素薄膜を作製した。基板にはSi(100)及び上記の1,2で作製したPt/Si(100),Ni/Si(100),サファイアを用いた。膜は、X線回折(XRD)、原子間力顕微鏡(AFM)、ラマン分光法を用いて評価した。AFMによる評価の結果、酸素圧力100mTorr,基板温度550℃,レーザエネルギー密度6J/cm^2,繰り返し周波数5HzでSi上に製膜を行うと、平均粒径が約20nmのファセットの明確なナノ微粒子により表面が覆われていることがわかった。また、幅が数nm長さが約1μmの線状の構造物も見られた。サファイアやPt/Si(100)、Ni/Si(100)上でも同様な微粒子が見られたが、その粒子密度はSi上に成長した場合と比較して約1/5程度と低くなった。XRD解析で結晶構造を調べると、ダイヤモンド(111)面に相当する回折ピークが得られた。X線回折スペクトラムからScherrerの公式により評価した粒径は15nmとなり、AFMによる評価と一致した。ラマン分光法によりナノ微結晶の評価を行った。通常、ダイヤモンドにおいては1333cm^<-1>に鋭いピークが存在するが、本研究で得られたナノ微結晶からは観測されなかった。しかし、1150cm^<-1>にブロードなピークが観測された。他のいくつかのグループでは、ナノ微結晶ダイヤモンドの可視ラマン分光において、1333cm^<-1>にピークは見られず、1150cm^<-1>にピークが現れると報告している。以上のことより、本研究で成長した炭素微細構造物は、ナノ微結晶ダイヤモンドだと考えられる。
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