研究概要 |
本研究では,赤外光発電における赤外光発電用PVセルの単結晶基板を試作することを意図しており,回転ブリッジマン法結晶成長育成装置を設計・作成し,高品質の赤外光発電用PVセルの単結晶基板を作成することを目的とした.回転ブリッジマン法は,水平ブリッジマン法に類似しているが,円筒状の種結晶と供給原料の間に半円筒状の成長溶液を配置した状態で,対称軸を中心に成長系全体を回転させることにより,溶液の攪拌を行う.さらに電気抵抗炉の低温部へ成長アンプルを移動することにより結晶成長させる方法である. 回転ブリッジマン法をモデルとして,アンプル回転が固液界面温度分布に及ぼす影響を調べるために,InGaSb, InGaAs三元混晶成長時の3次元溶液対流計算を行った.結果として,成長アンプル回転を行わないOrpmの場合では,溶液中部で温度が高く,固体壁の種結晶,供給原料で低くなった.成長アンプルの回転速度を100rpmとすると,温度分布は強制対流の影響を受け下壁の中央部に温度の高い領域が集中しているが,それ以外の領域は,温度勾配の緩やかな温度分布になっているのが分かった. 数値解析の結果より,アンプル回転と共に固液界面の温度が均一化することがわかり,単結晶成長の可能性が出てきた.回転ブリッジマン装置を組み立てIn_xGa_<1-X>Asの結晶成長を行なった.成長用アンプル内にはGaAs種結晶とGaAs供給原料の間にIn-Ga-As溶液を配置し,結晶成長は,電気炉の低温側にアンプルを移動させて行った.予想析出In組成比がx=0.03〜0.10までの成長試料においては,接合界面からの異方位結晶の発生はなく,成長厚5〜7mmの単結晶を成長することができたでた.In組成比分布は,連続原料供給をすることでほぼ一定となった.また,組成比の標準偏差は0.002であった.組成比のばらつきは極めて小さく,PVセル基板として十分使用可能であることがわかった.
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