本研究では、光熱ベンディング分光法用(PBS)用のクライオスタットの設計と作製を行い低温での薄膜の光吸収測定技術を開発することにある。PBSのクライオスタットは、試料を静寂な気体の冷却媒体中に置かなければならないため、窒素ガスを液体窒素で冷却できるものである。設計・作製したクライオスタットを使ってPBSの測定に使用した結果、つぎのようなことが分かった。 1.試料は振動の影響を受けやすいが、液体窒素の蒸発による振動がもっとも試料が振動する原因であることが明らかになった。したがって、液体窒素がの蒸発を極力抑えるようにクライオスタットを改良する必要がある。 2.C_<60>薄膜の低温での光吸収スペクトルを測定した。上記の試料の振動により、1.6eV以下のエネルギーギャップ内の吸収は観測できていないが、1.74eV付近に光吸収ピークが存在していることが確認できた。このピークは試料への光照射によってあらわれるものである。さらに、室温ではこのピークは観測されないが、これはピークが弱いため単にアーバックテイルに隠れているためである。測定した試料は、特別に光照射を行っているものではないため、このピークは蛍光灯などの光が試料作製から光吸収測定時までの間に当ったため現れたと現在のところ考えている。もし、これが正しいとすると電気伝導などのC_<60>固体の性質は、酸素のインターカレーションによる影響の他、意図しない間に光照射された場合、大きく変化すると考えられる。
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