多層カーボンナノチューブ(MWNT : multiwalled carbon nanotube)は良好な電気伝導を有する極微細線(直径〜10nm、長さ5μm〜)として知られている。また金コロイド粒子(GCP : gold colloidal particle)も極微細球形粒子(直径10nm)である。このようなナノ材料を単位材料として組み合わせて素子作製を行うことで、ナノスケール機能素子の容易な作製が期待される。そこでMWNTとGCPsを組み合わせて、電荷トラップ構造(メモリー構造)を試作した。 素子はSiO_<2/>Si基板を用い、MWNTにPt/Auのオーミック端子を形成しGCPsを付着させた構造である。MWNTを伝導チャネルとして利用し、ゲート電圧を印加することによりGCPsを帯電させMWNTの伝導の変化を調べた。GCPsをSiO_2基板上に定着させるために、あらかじめZEP電子線レジストでGCPsを付着させる領域にレジストの窓を作製し、その後N-[3-(Trimethoxysilyl)propyl]-ethylenediamineを純水で0.05%(v/v)に希釈した溶液で選択的に基板表面を活性化させた。この試料にGCPsを分散させた後、4.7Kにおいてバイアス電圧を固定してゲート電圧を掃引した。この結果、電流値に離散的な変化を伴うメモリー素子に特有なヒステリシスループを観測した。これはMWNTとGCPs間のキャリアひとつひとつの出入りを示していると考えられる。またバイアス電圧とゲート電圧を一定に保ち、いくつかの状態間をキャリアが遷移することに起因するランダムテレグラフ信号を観測した。これらの詳細を現在解析している。
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