本年度は、金属超伝導体としてアルミニウム(Al)とニオブ(Nb)を用いたトンネル接合(ジョセフソン接合)を作製した。まず、Alを使用したトンネル接合の製作には、電子ビームリソグラフィとAlの斜め蒸着を使用し、0.1×0.1μm^2以下の接合寸法を実現した。希釈冷凍機を用いて100mK以下の温度にサンプルを冷却し、かつ1テスラの磁場を印加することでAlの超伝導性を失わせた状態において、クーロンブロッケード現象を観測することができた。この微小Alトンネル接合を2個直列に接続した単電子トランジスタ4つを、容量型電圧分配器にゲート容量を介して結合させることで、4ビットのフラッシュ型A/D変換器を実現した。これは、単電子デバイスを用いた超高入力インピーダンス・高感度A/D変換器のプロトタイプなった。次に、Nbを使用したトンネル接合の製作には、DCマグネトロンスパッタ法と熱酸化法で作製されたNb/AlOx/Nb三層膜をフォトリソグラフィーと反応性イオンエッチングで微細加工する手法を用いた。これまでに5×5μm^2程度の寸法を持った接合の製作に成功している。なお、このNb/AlOx/Nbジョセフソン接合を高温超伝導体であるBi-2212系超伝導体単結晶上に作製し、その電流-電圧特性を評価したところ、通常用いるシリコン基板上に作製した接合では観測されない、特異なステップ構造が出現した。検討の結果、このステップ構造がBi-2212系超伝導単結晶内に存在するジョセフソンプラズマとなんらかの相互作用に起因するものであると推察された。
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