研究概要 |
1.シリコン酸化膜の光学的・機械的特性の評価 水素化アモルファスシリコンa-Si : H,シリカSiO_2の各単層膜を石英基板上に成膜し,光学的・機械的特性(屈折率,消衰係数,内部応力)を調べた。さらにa-Si : H膜におけるSi-H結合の有無を確認するためFT-IRによる赤外吸収スペクトルを測定した。その結果,Si-H結合の特性振動に起因する吸収スペクトルを観測できた。また多層膜断面のSEM観察を行い,多層膜にノジュールが皆無で,各層が観察範囲内で均一かつ緻密であることを確認した。 2.成膜装置の改良 多層膜フィルタの狭帯域化には,各層の光学膜厚を正確に(1/4)波長となるよう成膜することが不可欠である。光学膜厚の正確な制御のため,現有のスパッタ装置に光学膜厚モニター系を導入した。同モニター系では,成膜中の基板に照射したビームの反射電力を測定し,その時間変化のピークを検出することにより光学膜厚を推定する。ところが反射電力にノイズが混在するとピーク検出精度が悪化する。ノイズ低減のため,出力安定度のよいレーザ光源へ変更し,反射電力の時間安定性向上のためレーザ出力を直接モニターした。その結果,反射電力のノイズ(1秒毎の時間変動)は0.05%(改善前0.15%,目標0.01%),反射電力平均の時間変動は30分間で0.02%(改善前3%,目標0.2%)となり,改善を図ることができた。 3.DWDM用多層膜フィルタの作成,評価 光学膜厚モニター系を用いてミラー6層の2キャビティ多層膜フィルタ(層数27)を試作し,半値幅2.0nm(計算値1.9nm)のフィルタ特性を得た。ここで得られた半値幅は実用上必要な値(約1nm)に近いものである。同性能のフィルタを例えばTa_2O_5/SiO_2で構成すると層数は59層必要となるから,a-Si : H/SiO_2を用いることによる層数低減の効果が認められた。
|