本年度は、さまざまな部分回路を一つのシリコンチップ上に集積できるというシステムLSIの特徴を生かした新しい低消費電力メモリアーキテクチャを提案した。本研究の成果の一部は電子情報通信学会の論文誌に投稿し採択された。さらにそのメモリアーキテクチャの電圧設定を最適に決定する技術の開発を行った。特にメモリにはシステムLSIを制御するためのプログラムやデータが格納されるためハードウェアだけでなくソフトウェアの動作やデータの特徴を考慮した設計最適化が重要となる。本年度の代表的な研究成果は、LSIメモリの閾値電圧を動的かつ部分的に変更することにより、LSIメモリの待機時消費電力を大幅に削減する手法の提案である。さらに、LSIメモリの閾値電圧の設定を最適に決定する方法の提案も行った。具体的には、LSIメモリを論理的にいくつかのサブブロックに分割し、それぞれのブロック毎に2種類の閾値電圧のうちの何れかを割り当てる手法の提案を行った。CMOS LSIメモリのアクセス遅延時間は閾値電圧にほぼ比例し、待機時の消費電力は閾値電圧の指数に反比例するため、LSIメモリを含むシステム全体の動作速度と消費電力のトレードオフを考慮して、閾値電圧を最適に決定する技術が重要である。本研究では、ソフトウェアのコンパイル時に、メモリのアクセストレースの情報を収集し、その情報をもとに各サブブロックにおける実行時の最適な閾値電圧を決定する手法を開発した。また、LSIメモリの閾値電圧を最適に決定する処方に関してはアジア地区の設計自動化に関する国際会議にて発表を行った。
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