研究概要 |
本研究では,磁気光学薄膜を用いた光のマイクロ波応答に関する研究として,イットリウム・鉄・ガーネット(YIG)単結晶を用いたマイクロ波による光変調および光ビーム走査に関する研究を行った.具体的には,磁性体試料において自発的に存在する内部不均一直流磁界分布を利用して静磁波から交換スピン波および磁気弾性波への変換が効率的に行われるターニングポイントに注目して,同領域における光のマイクロ波応答を実験的に調べた.実験に用いたYIGは,厚さ1mmのバルクおよび100ミクロンの薄膜の二種類であり,それぞれの試料を基板としてマイクロストリップ線路を構成し,マイクロ波入力端子側のYIG端面付近に存在するターニングポイントを中心に波長1.3ミクロンの光を照射し,そのマイクロ波応答を2通りの方法で観測した.一つ目の方法では,受光器として一個のフォトダイオードを用いて,28kHzでパルス変調されたマイクロ波入力に対する透過光の偏光特性に現れる時間応答を,検光子に通して強度変調として観測した.二つ目の方法では,遠赤外用InGaAsリニアイメージセンサを用いて,光回折分布のマイクロ波応答を調べた.得られた結果として,まず時間応答については,1.9kGの直流印加磁界,マイクロ波入力電力が最大1Wに対して,1.5GHzから4.5GHzの周波数帯域において磁気弾性波,ω/2スピン波および静磁後退体積波による光応答特性を観測し,それぞれ-25dBから-30dBの変換効率を得た.次に,光回折分布のマイクロ波応答において得られた結果としては,バルクおよび100ミクロンの薄膜のいずれにおいても,ターニングポイント付近に光を照射した場合に,光のマイクロ波応答が最も大きくなること,ならびにバルクにおいてはマイクロ波周波数を2GHzから4GHzにわたって変化させたとき,ほぼ直線的に偏光することが確認された.
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