本年度は、合分波デバイス用屈折率分布型(GRIN)ポリマーレンズの試作とその材料設計を中心に行った。特に屈折率の波長依存性に着眼を置き、フッ素化ポリマー材料が極めて優れた特性を有していることを見いだした。このフッ素化ポリマー材料をベースとして、これまで我々が、光ファイバー母材作製方法として開発してきた界面ゲル重合法を用いて、実際にGRINポリマーロッドレンズを試作した。その結果、母材として、部分フッ素化アクリル材料を用いることで、通常のアクリル材料を初めとする炭化水素系ポリマー材料に比較して、屈折率の波長依存性が極めて小さい、すなわち、色収差の小さいロッドレンズが得られることを実験的に確認することができた。同様に、部分フッ素化ポリマーのみでなく、全フッ素化ポリマーを用いることで、更なる高い特性が発現が期待できる。 本年度の課題の一つである、屈折率の温度依存性についても、このフッ素化ポリマー材料は、他のポリマー材料に比較して優れた特性を有することが確認されたことから、分合波デバイスとして、フッ素化ポリマー材料を用いていくこととして、材料設計をほぼ終えることができた。さらに、分合波のための回折素子部の作製が必要となる。この作製方法について、検討を重ね、静岡大学杉原助教授が開発されたエンボス加工方法を採用させて頂くこととした。この方法は、エンボスの型を作った上でそこに、ポリマー材料を圧着することで、回折格子を転写するものであり、杉原助教授らはすでに本方法により、アクリル材料に回折格子を形成することに成功している。単一ポリマー材料ではなく、添加物が濃度勾配をもって存在するGRINポリマー材料に同一方法を用いることが可能であるかについて今後検討を行っていく予定としている。
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