単純・理想化された機能レベルでのデバイスモデルを発展させて、より現実的な設計に反映できる精度のデバイスシミュレーションを行った。これは実際のデバイスに懸念される諸現象を極力正確に取り込み、そのデバイス動作・性能を解析する。得られる結果は、理想特性に極力漸近するデバイス特性を実現するために用いるもので、構造をデバイス設計・プロセスフローに反映させる。評価課題は次の点であった。(1)電界遮蔽効果(2)量子井戸設計(3)成長層構造の層厚の最適化(4)最大波長可変幅の見積もり(5)静特性の振る舞いにおける従来レーザとの比較。以上から実現可能なデバイスプロセスを考えた。 本年度の研究成果として上記シミュレータをほぼ完成させる段階にきた。用いる結晶材料、成長条件の制約を外してデバイス評価を行う段階としては、既に上記(1)電界遮蔽効果(2)量子井戸設計(5)静特性評価を終えている。本シミュレーションの最終目的としての最適化されたデバイス設計には、実験環境から利用できる結晶材料の組み合わせなどに制約があるため、それらを考慮して評価する必要があり、作製予定の具体的なデバイス形態としてのパラメータ抽出を進めている。 実用効果の大きい光ファイバ通信への応用の観点から発振波長は長波長域(1.3μm〜1.5μm)を狙ったデバイス設計を当初考えていたが、宇宙応用も含めた距離センサーなどへの応用では高出力化の容易なGaAs/AlGaAs系の方が有利である。最初のデバイスとしては作製条件が緩く、新構造の特長が効果的に現れるデバイス構造が望ましいため、両材料系での評価を比較決定することをシミュレーションに含める。 また本年度は次年度に控えるデバイス作製を経て、デバイス静特性測定のための測定系構築を進めてきた。多電極デバイスのための電流注入及び電圧印加のためにマイクロプローバを含めた評価系、プロセス用のアクセサリ類を整えている。
|