研究概要 |
画像の復元過程に人間の視覚特性を反映させるという,本研究のテーマの実現に向け,本年度は主に以下のような準備的な研究を行った。 1.画像の画質に関する人間の主観評価のデータを収集すると共に,画像を表現する空間に人間の視覚特性に基づく計量を導入するモデルの構築を試みた.具体的には,人間の視覚特性は,画像のベクトルと相関の高い摂動(例えば,全画素に対する輝度値の定数倍や平行移動等)に対しては,比較的許容範囲が広く,一方,画像のベクトルとの相関の低い摂動(例えば,白色雑音の付加)等では,その違いを鋭敏に知覚可能であるという性質を持つものであることを示唆するデータより,前者に対する基底成分の再現性の評価には比較的低い重みを与え,逆に後者には高い重みを与えるような計量のモデルを構築した. 2.上記計量を反映させた復元の枠組みの構築を目指す第一段階として,既存の復元手法における計量の扱いに対する数理的な解析を行った.元来,評価すべきは未知である原画像が属する空間における復元画像の再現精度であるが,既存の復元法では,劣化した画像が属する空間において間接的に評価したり,作用素の近さの評価という形に置き換えるなどしていた.よって,本来の復元の目的を正しく記述する枠組みについて考察を行い,その枠組みに対する既存の復元手法(及びその考え方)の位置づけや関係,相違などについて解析を行った.
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