研究概要 |
平成13年度における研究成果は,主に,次に述べる2点に関する基礎的検討によって得られたものである. 1.階層画像に対するWatershedに基づく画像の領域分割 2.均等色空間に基づいた領域統合,および,領域による動画像の構造化とチューブの作成 1.について 動画像の構造を解析するためには,あらかじめ同一の性質を有する均一な領域ごとに分割させる,画像の領域分割を行う必要がある.研究手法の基礎的な検討として,モルフォロジー演算の一手法であるWatershedに基づく領域分割について調査した.Watershedに基づいた領域分割手法では,雑音や照明の影響によって,必要以上に領域が分割される過分割が生じやすい.そこで,Watershed処理を施す前処理として,画像を解像度変換させた複数の画像に対して平滑化フィルタ処理を行い,その後にそれぞれの階層画像に対してWatershed処理による領域分割を行った.各階層ごとに求められた分割結果を統合させることにより,過分割を抑えた領域分割結果を得ることを確認した.しかしながら,オブジェクト抽出を目的としたとき,本手法によっても十分な領域分割結果が得られたとはいえない. 2.について 1.で行った階層画像に対する領域分割の検討と同時に,隣接した領域同士の色の近似度に従って領域を統合させる手法の検討を行った.色による近似度判別には,画像上の雑音や照明による影響に左右されやすい.そこで,人間の視覚に近い均等色空間による色表現を用いて,隣接画像の色の近似度判別を行いながら領域の統合を行った.人間の感覚に近い領域統合が実現されたことを確認した.さらに,動画像の隣接フレームごとに得られた領域分割結果をフレームごとに追跡することにより,領域が時間方向に連結されたチューブの作成が容易となった.チューブの生成により動画像の解析がしやすい環境が整い,来年度以降の研究目標であるセマンティックオブジェクト抽出実現に,一歩近づいたといえる.
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