研究概要 |
これまで発振器の結合系に見られる相互同期現象について盛んに研究が行われてきた.近年この発振器の結合系をメモリやニューラルネットワークへ応用しようとする試みが報告されるようになった.特に,同じ特性を持つ複数の発振器を1つの抵抗で結合した回路においては,各発振器の位相がずれて同期するような現象が見られ,その位相の組合せから,非常に多くの異なる安定状態が得られるため,メモリやニューラルネット等への応用に有用であると考えられる.また.このような回路を拡張しネットワーク状に配置した,結合発振器ネットワークが提案されている.このようなネットワークにおいても,位相ずれ同期により多様な安定状態が見られ,またその構造からも,本システムはメモリやニューラルネット等への応用に対して,非常に有効であると考えられる.本研究はその結合発振器ネットワークを実用化するために,様々な研究を行っていく.本年度はネットワークにおいて断線等の事態が発生したことを想定し,ネットワークに含まれる素子が欠落した場合にネットワークの同期現象にどのような影響があるかを調べ,その状態を見ることで,ネットワークのどの位置に欠落が見られるかある程度判断できることを示した.また,LC発振器ネットワークにおいてネットワークの境界に端に存在する接地されたインダクタを用いて新たな星形結合部を作るという簡単な修正を加えると,同期現象が大きく変わることがわかった.一方,結合発振器ネットワークを実用化する場合,数多くある安定状態の中から,所望の安定状態を得るためにネットワークになんらかの制御を加える必要があると考えられる.そこで,RCウィーンブリッジ発振器の星形結合系を周期的なパルス列によって駆動した回路を提案し,パルスの影響によって安定状態が刻々と変化することがわかり,このパルスによる駆動を用いることでネットワークの制御を行うことが可能ではないかと考えられる.
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