研究概要 |
本年度に行った研究業績を要約すると次のようになる. 1.シュレーディンガーの猫状態による量子ビットに対する測定法の検討 シュレーディンガーの猫状態と呼ばれる量子状態で,量子ビットを構成した場合,量子ビットを読み出す量子測定について考察した.具体的には,光と原子の相互作用として知られるラムゼイシステムにより,読出しを実現できるかを検討し,相互作用時間やマイクロ波を調整することで,量子ビットを読み出すことができ,かつ,測定後の状態を,基本量子ビットであるシュレーディンガーの猫状態に収縮可能であることを示した. 2.シュレーディンガーの猫状態による量子ビットに対する1量子ビット回路の考察 量子回路の物理的対応は,量子ビットが本質的に2次元空間で表されるのに対し,光は無限次元空間で表されるため,自明ではない.しかし,これまでに,オーストラリアのグループにより,1量子ビット回路の近似的実現法が示されている.本研究では,任意の量子ビットを入力した場合の1量子ビット回路の近似の妥当性について,フィデリティ規準により評価した.その結果,入力に依存して近似精度が大きく変動するため,ユニバーサル論理回路としては十分ではなく,機能を限定して利用すべきであることがわかった. 3.コヒーレント状態による量子ビットに対する1量子ビット回路の考察 最近の量子テレポーテーションの研究成果を根拠として,コヒーレント状態による量子ビットが考察され,イギリス及びオーストラリアのグループにより,1量子ビット回路の近似的実現法が示されている.コヒーレント状態は,超長距離量子通信に利用されると目されている.この1量子ビット回路についても近似の評価を行い,基本量子ビット入力の場合,量子回路が望ましい動作を行うことを確認した.
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