本年度の研究においては、まずインターネットルータにおけるパケット処理方式を改善することによって、フロー間の公平性を向上させる方式についての検討を行った。まず、フロー数に関係のない固定サイズのテーブルを用いてフロー処理を行うSRED方式をべースとし、さらなる公平性の向上を図るために、SRED方式を改善したZL-RED方式の提案を行った。その結果、通常のルータではスループットに大きな不公平が発生する異なるバージョンのTCPコネクションが存在する場合においても、公平性が向上することが明らかとなった。 さらに、パケット処理方式として提案されているであるRED(Random Early Detection)方式に着目し、その性能評価および改善方式の提案を、特にユーザ間の公平性に着目して行った。まず、REDの基本的な性質を明らかにするために、数学的解析手法を用いた性能評価を行い、従来のTailDrop方式との比較を行った。次に、REDの欠点のひとつである、パラメータ設定の困難さを解消するために、REDのパラメータを自動的かつ動的に設定することのできる新たな改善手法を提案し、その有効性をコンピュータ上のシミュレーションによって行った。その結果、提案手法を用いることによって、REDの高い公平性を維持しながら、欠点であったパラメータ設定を自動化することが可能となり、今後のインターネットルータヘのREDの適用のための重要な結果が得られた。 さらに、これらの方式をネットワークプロセッサを用いたシステムヘ実装することを目的とし、ネットワークプロセッサを用いたネットワークエミュレータシステムの構築を行った。本年度においては、インテル社製のネットワークプロセッサIXP1200を用い、ルータにおけるパケット処理方式であるTailDrop及びRED方式の実装を行い、正しく動作し、かつオーバヘッドが小さいことを確認した。
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