研究概要 |
最尤復号は,誤り訂正符号の復号法の中でも最も基本的かつ重要な復号法である.申請者はこれまで,従来法よりもはるかに効率的な適応型再帰的最尤復号(adaptive and recursive maximum-likelihood decoding, AMLD)アルゴリズムの提案を行っている.計算機模擬によると,符号長が64程度の場合,AMLD法の計算量は代表的な最尤復号アルゴリズムであるビタビ法の数千〜数万分の一程度となることが明らかになっている.一方,符号の規模が大きい場合や通信路の信号対雑音比(SN比)が小さい場合は,AMLD法でも復号計算量が爆発的に増大してしまう現象が発生する.通信系の性能安定のためには,そのような特異点的な受信系列が存在することは望ましくない.平成13年度の研究では,特異点的な受信系列が与えられたときのAMLD法の振る舞いについて詳細に解析し,問題解決の方法について検討した.AMLD法では受信系列を比較的短い区間に再帰的に分割し,各区間における局所最尤系列を計算することで最尤符号語の推定を行う.通常は,比較的少数の局所最尤系列を計算するだけで最尤符号語を発見することが可能であるが,受信系列における雑音の影響が大きい場合,非常に多くの局所最尤系列を計算する必要が発生することが明らかとなった.この問題を解決するため,AMLD法の改善方法について検討した.改善版AMLD法では,局所最尤系列を計算する際に,系列の隣接条件を与えることができるような仕組みを導入する.改善版AMLD法の仕様や基礎的要件についてはほぼ詳細が決定しており,現在,ソフトウェアによる試作作業を行っている.また,上記の課題と並行して,AMLD法で利用している考え方を他の復号法に応用するととの検討も行った.
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