災害現場や宇宙、深海での作業において遠隔操作は不可欠な技術である。しかし、ビデオ映像による遠隔作業は、直視による作業に比べて作業効率が劣ることがわかっている。そこで、中心視領域のみ解像度が高いという人の視覚特性を考慮して、広画角の画像に高精細の画像を埋め込んだ複合画像を用いたデジタル複合画像立体映像システムを開発している。デジタル複合画像立体映像システムは、NTSCのビデオ信号を使う従来のアナログの複合画像立体映像システムに比べて、画像の大きさや精細さの変更が自由に変えられるため様々な条件で実験することが可能である。これまでに、ロボットアームを用いた遠隔作業において、作業を行うロボットアームのハンドに高精細画像が追従するようにしたデジタル複合画像立体映像システムにおいて、従来の一様な精細さの画像を用いるデジタル立体映像システムを用いた遠隔操作よりも作業効率が高いことがわかっている。ただし、ハンドに高精細画像を追従させると、ハンドから離れた個所を見る際には、ハンドの位置の移動が必要となるため、作業内容によっては作業効率が低下することが予想できた。例えば、作業空間内の指示の内容によって作業対象が変わるというような作業である。そこで、本年度は、デジタル複合画像立体映像システムに注視点測定装置を導入し、高精細画像を注視点に追従させるシステムを開発し、遠隔作業の実験を行った。その結果、高精細画像をロボットアームのハンドに追従させるよりも作業効率を向上できることが明らかになった。
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