スタック型円形MSAは、申請者が提案する拡張されたキャビティモデルにより、上層、下層の二つのキャビティにより構成される。このとき、上下層間に置かれたパッチ導体をどのように取り扱うかが問題となる。そこで、上下層間に置かれた円形パッチ導体の解への影響について調べるため、単層構造の円形MSAのパッチ導体上下に流れる電流を、パッチ導体上での積分方程式にスペクトル領域モーメント法を適用し導出した。数値計算結果より、パッチ導体上側の電流は円形MSAの入力インピーダンスにほとんど影響しておらず、解への影響としては下側の電流のみを考慮すれば良いことが明らかとなった。これにより、スタック型円形MSAにおいて、上下層間のパッチ導体は、上層キャビティでは放射素子としての働きはなく、接地導体板として取り扱えばよいことになる。 次にスタック型円形MSAを自由空間、上部誘電体、下部誘電体、接地導体からなる4層構造の層状媒質とみなし、スペクトル領域での波動方程式の解に、各層間の境界条件を適用することにより、各誘電体層でのグリーン関数の導出を行った。この各層でのグリーン関数を用い、上層、下層キャビティの開口表面アドミタンスの定式化を行い、この開口表面アドミタンスを含む開口でのインピーダンス境界条件より、キャビティ内部電磁界を導出した。 提案する解析法により、上下層間の相互アドミタンスを計算することができる。すなわち、上下層間の相互影響を考慮したアンテナの解析が可能となる。数値計算結果より、上下層間の相互アドミタンスは大きく、相互アドミタンスを考慮した解析が必要であることを明らかにした。 今後、入力インピーダンスの計算値と測定値の比較を行い、提案する拡張されたキャビティモデルの有効性を検証する必要がある。
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