研究概要 |
従来のホップフィールドネットワークに基づいた確率的2値ニューラルネットワークを提案した.通常のニューラルネットワークにおいては,各ニューロンの状態(2値ネットワークの場合は0か1)と出力は一致しており,ボルツマンマシンの場合は入力の加重和によって1の状態をとる(すなわち1を出力する)確率が定まる.本研究で提案したニューロンモデルは,状態は入力によって決定論的に定まるが,出力がある確率pで反転するものである.このような確率的ニューラルネットワークについて以下のような検討を行った. 1.各ニユーロンの出力における反転確率pを変えて,ネットワークのエネルギーの状態遷移を計算機シミュレーションにより観測した.その結果,確率pが高い時は状態変化が激しく,確率pが低い時は従来のホップフィールドネットワークに近付くため,極小値を脱する事が困難となることを確認した.また,エネルギーの分布についても調べた結果,ボルツマンマシンのように低いエネルギーの状態の出現確率が最も高くなるとは限らないが,確率pを適切に設定することで,低いエネルギーの状態の出現確率が高くなることが確認できた. 2.上記で観測したネットワークエネルギーに基づき,その最小解探索能力を具体的に巡回セールスマン問題に応用し,その探索能力を検討した.その際,従来のホップフィールドネットワークを用いて,初期値をランダムに与えて最小解探索を行った場合と比較検討した.提案モデルにおいては,pを時間的に変化させることでアニーリング的な効果を導入した.その結果,ホップフィールドネットワークを用いた場合よりも,最適解やこれに近い解を探索する能力が高いことを確認した. 3.上記の計算機シミュレーションにおいては,一次元写像から生成されるカオス乱数を利用した.カオス乱数の設計に関しては,カオス2値系列のmod-2加算で得られる系列の性質を理論的に与えた.また,一次元カオス写像の有限精度による実現例として,非線形フィードバックシフトレジスタなどで生成可能な最大周期系列の生成についても検討を行った.
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