本研究では偏微分方程式や遅延微分方程式などの数値計算に現れる高次元の位相空間を軌道の不安定方向の部分空間とその直交補空間に分解して扱う効率的な計算手法(周期軌道を求める部分空間シューティング法など)の開発とその応用、および周期軌道理論に基づくカオスアトラクタの構造解析に関して、以下の検討を行った。 1.高次元系のカオスアトラクタに埋め込まれた不安定周期軌道の探索において効率良く収束範囲を広くするための部分空間不動点反復法に関して、低次元のテスト問題を用いて、収束範囲の広さおよび長周期の不安定周期軌道の探索における大域的収束過程の特徴などに関する詳細な数値実験を行った。 2.部分空間不動点反復法を空間自由度をもつ強制自励振動系(半導体内の電子輸送現象に伴う時空間パターン形成を記述する偏微分方程式モデルを主な対象とした)におけるカオス的振動の不安定周期軌道解析に適用し、同手法の局所収束性や大域収束性に関する基礎的な検討を行った。 3.半導体内の電子輸送現象に伴う高次元カオスを、時空間パターンの分岐現象やリヤプノフスペクトラムの観点から詳細に解析した。
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