研究概要 |
環境問題の多くは局所スケールの問題から発生し広域な範囲に影響を与えているため,高分解能センサで取得される局所的な情報を低分解能センサで取得されたデータを介して広い範囲に外挿することにより,細かな情報を広範囲・多頻度で推定することのできる手法の開発が望まれている。そこで本研究では,リモートセンシングデータを用いた環境変化の評価法の開発を目的とし,パラメータとして海水温度の差異に着目し検討を加えた。本研究で提案する手法の概要は以下のようになる。 始めに,広範囲・高頻度で取得されるNOAAデータと高分解能データであるランドサットTMデータを対象とし,データに包含される多種多様な「あいまいさ」を考慮するため,ファジィ回帰分析を施した。次に,着目画素を9分割にして擬似画素を作成し,擬似画素と近傍画素との関連の度合いを求めた。また,擬似画素の含まれるオリジナル画素の値と関連のある近傍画素の値をファジィ出力値集合の入力値とした。最後に,算出したファジィ回帰直線をスライスし,そのスライスレベルにおける水温データのファジィ出力値集合を求め,簡略化ファジィ推論法により輝度情報(海水温度)を推定した。 ブイロボットにより観測された海水温度(対象:日本海)と比較したところ,提案手法による推定結果はNOAAデータを用いて推定した海水温度よりも推定誤差が低減することを確認した。また,一般的な内挿法である最近隣内挿法や3次たたみ込み内挿法による結果と比較したところ,分解能に埋もれ判読の困難であった沿岸部などの領域における細かな温度情報が,空間情報を用いた提案手法により判読可能であることを明らかにした。 今後は,リモートセンシングデータから得られる海水温度と岩ガキなどの沿岸部における生態系との関連,並びに土地被覆情報の季節変化がリモートセンシングデータに与える影響などについて検討を加える予定である。
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