研究概要 |
環境問題の多くは局所スケールの問題から発生し広域な範囲に影響を与えている。このため,昨年度までの研究において,高分解能センサで取得される局所的な情報を低分解能センサで取得されたデータを介して広い範囲に外挿し細かな情報を推定する手法を開発した。今年度は開発手法の改良を目的とし,山地や海域など異なる特性を示す複数の土地被覆情報から構成される地域の環境変化について検討を加えた。具体的には,秋田県鳥海山および鳥海山からの伏流水が湧出する日本海沿岸部を対象とし,リモートセンシングデータと各種パラメータとの関連について検討を加えた。 始めに,伏流水の湧出に伴う海水温度の相対的な差異を判読するため,多時期に取得されたランドサットデータの熱バンドデータ(2002年9月2日(9月データ),1999年8月1日(8月データ),2001年3月23日(3月データ))のDN値に色変換処理を施した。その結果,対象領域の海水温度は,周辺地域の海水温度と比較し低くなっていることを確認した。 次に,対象領域における海水温度の相対的な差異を求め,伏流水の湧出地点を推定した。9月および8月データにおける推定地点では,一部に相違が認められるものの,海水温度の低く示される地点は一致していていた。また,上記データと比較し明らかな差異の抽出は困難であるものの,3月データにおいても伏流水の湧出により各推定地点と周辺領域との間に相対的な温度差の生じていることが見て取れた。すなわち,リモートセンシングデータから伏流水の湧出地点推定が可能であることを明らかにした。 最後に,海域を対象としてK-means法によるクラスタリングを施し,地形情報と比較した。その結果,特に3月データ(熱バンドデータを除く)のクラスタリング結果において,塩分濃度の境界線の位置がクラスタリング結果と大局的に一致している様子が認められた。
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