本研究では、人工衛星からのリモートセンシング画像データおよびGIS(地理情報システム)を用いて、湿原域の植生分布およびその周辺土地被覆、土地利用分布を計測、評価し、両者の空間分布の関係を調べる空間情報処理手法を開発することを目的としている。 本年度では、リモートセンシングにより精度良く湿原域の植生面積を推定する手法と湿原域に流れ込む水質を評価する手法の開発を行った。現在までに空間およびスペクトル分解能の異なった人工衛星の画像データを用いて数多くの植生分布図が作成されている。しかしながら、植生の現状およびその変化を高精度に評価しているとは言い難い。現在の衛星の中では、比較的空間分解能が高いLANDSAT TMでも国土の狭い日本においては、充分な分解能とは言えない。したがって、植生域の面積を精度良く評価するためには、低空間分解能両像の一画素に含まれている様々なカテゴリーが混在したミクセルを分解しなければならない。さらに、リモートセンシングにより湿原に流れ込む水質を評価するためには、クロロフィル濃度、SS濃度が高い水域を対象にしなければならない。したがって高濃度水域において、リモートセンシングにより精度良く水質を評価する手法を確立する必要がある。 本研究では、(1)LANDSAT TM画像データとGISデータを組み合わせ、湿原植生に進出しているハンノキ林の分布面積をミクセル分解法により評価する手法を開発した。さらに、(2)高濃度の水域を対象に、クロロフィル濃度、SS濃度をリモートセンシング技術より評価する手法を手案し、この手法が有効であることを示した。
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