研究概要 |
本年度は,広ダイナミックレンジ画像の一種として,マルチスペクトル画像を対象とし,その可視化手法について検討を行った.近年、スペクトルに本来含まれる豊富な情報量に着目した計測、圧縮、評価など様々な研究が行なわれており、その中でも、最近各画素がスペクトル情報を持つマルチスペクトル画像が注目されている.しかしながら、こうしたマルチスペクトル画像が持つ情報を可視化するための有効な方法は今のところ存在しない、例えば、各画素や各周波数帯域に着目してスペクトル情報を可視化しても,それは直観的に理解しにくいものとなる.また,RGBの3チャネルから色表現を得た場合は、スペクトル情報を直観的に理解できるが,メタメリズムによって情報を損失する恐れがある.そこで,本研究では情報の損失を抑えつつ,人間にとって直観的に理解しやすい効率的なマルチスペクトル画像の可視化法を提案した. 提案法は,各画素のスペクトル情報の相対的な距離関係,すなわち位相関係を保持することで情報の損失を抑え,かつRGB Scaleを基にした色表現を得ることで直観的に理解しやすい可視化を行うものである.位相関係の保持には,SOM(Self-Organizing Map)と呼ばれる学習アルゴリズムを用いた.SOMによって,スペクトル空間上に位相関係を保持するように特徴マップと呼ばれる非線形部分空間を張ることによって,情報の損失を抑えた表現を得ることができる.また,RGB Scaleを基にした色表現を得るために,SOMに対して制約条件を記述したルールを付加した.学習前にRGBに対応する線形部分空間を与え,特徴マップがその空間からあまり離れないような制約条件を用いた.このとき,線形部分空間を等色関数により定義することで,特徴マップからRGB Scaleを基にした色表現を得ることができる.実際に提案法をマルチスペクトル画像に適用し,通常のRGB Scaleによる色表現と比較したところ,提案法ではより明確にスペクトル情報の違いを識別することができることがわかった. 来年度は輝度に関する広ダイナミックレンジ画像を対象とした可視化について検討を行う予定である.
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