研究概要 |
メンバーシップ関数はファジィ理論において暖昧さや主観性の定量化手法としてもっとも基本的な役割を担う.本研究はその形状を心理実験的に決定する手法の改良を目的としている.特にファジィ理論に関する知識を有しないユーザを対象とし,計算機システムとユーザが対話することでメンバーシップ関数を同定する対話型同定法の使いやすさの改良を中心課題としている. 今年度得られた成果は次の通りである. (1)利用するシステムとの関係,同定手順の違いに着目し,メンバーシップ関数同定法の新しい分類を提案した.従来は同定の際に実験者から呈示する対象,それに対して被験者が回答する対象の別により分類整理が行われていた.これに対して本研究では,システムの対話の有無,また計算機の利用の別による新しい分類を提案した. (2)対話型メンバーシップ関数同定法の定義とその特徴を明らかにした.対話型システムの特徴が潜在的な知識,情報を顕在化すること,また対話がその呼び水的な役割を担うことを指摘した. (3)実例として境界漸近推定(BASE)法を取り上げ,問題点を示し,改良の方向性を明らかにした.吉川により提案されているBASE法を取り上げ,同定時に使いやすさを低減させる阻害要因を明らかにした.阻害要因として,強制二者択一回答による所属度遷移領域の狭窄,同定されたメンバーシップ関数結果の呈示の際の表現方法,初期回答での誤回答の同定形状へ及ぼす影響などが認められた.各要因に対する対応案を明らかした. (4)区分線形型ファジィ集合に対する演算ライブラリを構築した.BASE法から得られるメンバーシップ関数は台形型となる.既提案の多くの手法では精度よく効率的に処理,演算することができないため,台形型などを含む区分線形型ファジィ集合に適した演算ライブラリをJava言語により開発した.これにより処理効率の向上が認められた.
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