本年度は、線構造による画像理解の実現に必要な構造抽出のために、線集中ベクトル場モデルの拡張の可能性とその性質について検討を行った。 線集中ベクトル場モデルは、黒い背景上の白い線構造、すなわち、線状凸領域の検出を非常に高精度に行うことができる。しかし画像認識では、このような線構造と同様にエッジもまた、非常に重要である。しかし、線集中ベクトル場モデルでは、エッジ部は理論的には集中度が0.5と比較的低い値になる。実画像ではベクトル場の乱れによる集中度の低下が発生するため、集中度によるエッジの検出は困難である。 そこで、エッジ検出のために原画像に対して1次微分処理による前処理を施し、集中度を求める方法を考案した。前処理により、エッジ近辺の画素値は線状凸領域をなす。つまり、前処理を施すことにより、線状凸領域と同様に、エッジも集中度によって検出することが可能になる。このとき、エッジのコントラストや幅は、線状凸領域の場合と同様に、集中度には影響しない。 さらに、平滑化の性質を持つ2次微分処理である、回転差分マスクフィルタを前処理として施すことにより、SN比の低い線画像でも、安定した集中度を得ることができる事がわかった。 これは、輝度勾配ベクトル場の概念を拡張し、目的とする形状特徴を強調する前処理によって得られる特徴ベクトルによるベクトル場モデルを考えることで、より多くの形状特徴に対して、コントラストやスケールに依存しないという輝度勾配ベクトル場モデルと同様の特性をもつ集中度を定義できることを示している。
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