本研究では、力学システムや電気システムおよびそれらの結合系などの幅広い物理システムを表現できるハミルトニアンシステムという形式のシステムに対して、一般化正準変換を用いた制御手法に関して研究を行った。特に実験でも扱う予定である非ホロノミック系や複雑な電気機械系に適用可能な手法の開発を念頭におき、これまでに以下の結果を得ている。 平成13年度は次年度の準備として一輪車両の実験機の試作を中心に行った。これは一輪で倒立して移動する系であり、本体に取り付けられた加速度および速度センサと外部からの視覚センサを用いてその位置を観測して制御を行う。制御則としては先に述べた一般化正準変換を中心とした非線形制御手法を用いる予定である。試作機の設計および各部品などの発注はすでに終わっており来年度初めにも完成予定である。 また実験機の試作と並行して・理論的な側面からも研究を行った。とくに一輪車系も非ホロノミツク系であることから、非ホロノミックなハミルトニアンシステムの安定化および軌道追従制御に関する理論的な結果を得た。これらの結果では、追従軌道をうまく選ぶことにより非常に簡単な構造の補償器を用いて漸近的に軌道追従が達成できるものになっている。またこれらの制御手法を出力フィードバックの形に一般化するという研究も行っており、本手法を用いると非ホロノミック系に対しても出力フィードバックで制御が行えることがわかった。 これらの結果をふまえて、来年度は実験機を理論どおりかせるかどうかの検証を中心に研究を行ってゆく予定である。ここで提案している一般化正準変換を用いた手法は、物理システムが生得的に持っている受動性と呼ばれる性質に基づいたものであり、ロバストな手法であることが期待されている。したがってこれらのロバスト性の検証にも重点をおいて研究を行ってゆく予定である。
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