研究概要 |
本研究では高品質な画像符号化手法の開発を最終的な目標としている.平成13年度においては研究課題の達成に向けて,まずサンプル値系の消散性と位相特性に関する基礎的な研究を行った.既に先進的研究においてサンプル値制御系の設計手法がディジタルフィルタの設計へ応用可能であり,従来手法と比べ優れた結果が得られていることが知られている.本研究ではサンプル値制御系の設計・解析手法の一つである,離散時間近似に基づくアプローチによりディジタルシステムの消散性を新たに提案した.報告者が知る限りこの種の研究は他に例が少なく,先端的な研究であると考えられる.さらに報告者はディジタルフィードバックシステムが消散的であるための必要十分条件を導出し,この結果の応用として予め指定した安定余裕を確保するディジタル制御器の設計手法を開発した.この手法をディジタルフィルタ設計へ応用すれば,例えばフィルタの入力信号に対し,出力信号の全周波数帯域における位相遅れの上限が,予め指定した値で押さえられるようなディジタルフィルタの設計が可能になる.また設計手法は数値最適化手法を用いることで,試行錯誤が不要で設計が容易であるという著しい利点がある.理想的なフィルタは線形位相特性に近い周波数特性を持つが,従来のIIRフィルタの設計においては予め位相遅延の上限を決めてフィルタ設計を行うのは困難であった.これに対し,本研究の成果を用いればそのようなフィルタを系統的かつ直接的に設計することが可能になる.
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