本課題の最初の年である本年度は、非線形システムの設計においてローカルとグローバルな特性を融合するため、土台として必要な基礎理論の構築に取り組んだ。 まず、研究代表者が独自に最近見い出していた「状態依存型スケーリング」という新しい概念を非線形システムの設計に組み込む方法を整備することから始めた。具体的には、線形ロバスト制御でポピュラなスケーリング付きH無限大制御で行われる設計方法の自然な拡張の形で、状態依存型スケーリングを非線形制御の設計手順に導入した。これにより、非線形制御設計と線形制御設計の間に期待通りの接点を作り上げることができた。さらに、システムがある三角構造をもつ場合は、非線形コントローラの設計を逐次的な手順で行うことが可能であり、必ずコントローラの設計に成功することを理論的に証明することができた。その際、状態依存型スケーリングはシステムの安定性や性能およびそれらのロバスト性を確保するための重要な設計変数であり、設計仕様に応じて状態依存型スケーリングにある程度の自由度を与えられることを発見した。 そこで、線形H無限大制御の性質を状態依存型スケーリングのローカルな性質として与えることで、非線形コントローラのローカルな性質を整形するというアイディアに至った。つまり、非線形コントローラをローカルに線形ロバストコントローラに一致性させる方法として、状態依存型スケーリングが非常に有効であることを理論的に説明することが出来た。また、ローカルな性質の整形を組み込んでも、状態依存型スケーリングに基づく非線形コントローラの設計は、数値計算に持ち込みやすい形のmin-max問題として帰着できることがわかった。以上、非線形システムの設計におけるローカルとグローバルな特性の融合という最終目標へ到達するために欠かせない土台を、理論としてある程度作り上げることができた。 このようにして得られた初期研究成果は、速報として国内外の研究集会で発表した・投稿した。
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