研究概要 |
これまで我々は,ロバスト制御の代表的な手法であるH_∞制御において,設計仕様の特定に関与する一般化制御対象の非対角サブシステムが正の実軸上に伝達零点を持つ場合に制御性能の劣化を伴わず,H_∞制御器の次数が減少することを明らかにしている.本年度の研究では,このサブシステムの不変零点構造(零点の幾何学的・代数的重複度)と制御器次数の減少との関連を定量的に明らかにし,あるクラスに属する低次元制御器の存在を,線形計画問題を解くことによって判定できることを示した. 具体的には,(1)不変零点が原点を除く正の実軸上の一点に存在する場合,その幾何学的重複度を一般化制御対象の次数から引いた時に得られる数を次数として持つH_∞制御器が求められること. (2)不変零点が右開半面上に分散して存在する場合には,線形行列不等式による条件によって低次元H_∞制御器の存在判定できること. (3)存在が保証されるH_∞制御器を導出するためのアルゴリズム を明らかにした. 以上によって,これまで我々が明らかにしてきた結果をさらに広いクラスの問題へと拡張することができた.これによってロバスト制御問題の構造を特徴づけている一般化制御対象に含まれる情報から直接H_∞制御器の次数を特徴づける試みの一つが成功したと言える. なお,次年度の課題としては,上記の結果をさらに安定零点を含んだ一般的な問題へと拡張し,さらに,得られた理論結果が役に立つ現実の問題について明らかにすることである.
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